一月場所
一月一日
ドス恋!くぼうちでごわす! つうかあけおめでごわす! あけおめとはあけましておめでとうございますの略でごわす。そういうことをちゃんと知って欲しいのでごわす。グレーテキストでコジャレ気取りでごわす。プププ。マジでやってるでごわすか。ついでに文中リンクも!とかやったらかまくらのときみたいに過剰反応されるでごわすか!真理を突かれて!プププー!ダサ!ガンバレかまくら!ワッショイワッショイ!
「よお! くぼうちちゃん! どうしたいお祭り騒ぎなんかで? それよかファックしてるか〜?!」
「お、おやかた。正月から過激な発言でにぎわしているでごわすな」
「そりゃそうだよくぼうちちゃん。くぼうちちゃんが女子とファックするまでは死んでもしにきれないからね。どうだい女子の方は? ちゃんと書き込み増えているか?」
親方はいつも親身になっておいどんのことを考えてくれているのでごわす。ありがたいのでごわす。
「あ、アクセスの方は増えてきているのでごわすが、書き込みの方がどうやらおかしいのでごわすよ。女子の書き込みがないのでごわす」
「あ? なんだそりゃ?」
「書き込みをしてくれたりするのはみんな男なのでごわす。女子の書き込みが全然ないのでごわす!」
「ちょ、ちょっと掲示板を見せてくれ!」
親方はなにやら慌てた表情だったのでごわす。おいどんにはそのことが何を意味しているのか全然分からなかったのでごわす。
「親方? どうしたのでごわすか。一度家に帰ってみないとわからないのでごわすよ」
「じゃあ家まで連れて行け! とにかくすぐにだ! オマエは事の重大さが全然分かっていないみたいだからな」
「そ、そうなのでごわすか…」
おいどんのアパートまで親方を連れていったのでごわす。親方を中に入れたのは初めてだったのでごわす。緊張したのでごわす。親方はおいどんのサイトをしばらく見て、そして掲示板の書き込みを見ると、とたんに震えだしたのでごわす。
「お、おやかた? どうしたのでごわすか?」
「いけねえ、いけねえよ…こりゃいけねえよくぼうちちゃん…」
「おやかた? なにがいけないのでごわすか? 教えて下さい!」
親方はしばらく黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いたのでごわす。
「これは…典型的な非モテ系サイトだ。これではファックどころか女子のネットモもできねえよ。まさかここまで進行していたとは…」
「そ、それはどうしてわかるのでごわすか!」
「書き込みしている人のサイトに飛んでみろ」
「こうでごわすか?」
おいどんは言われるまま、サイトに飛んでいったのでごわす。そこにはコジャレのコの字もないただただテキストがならんだサイトがあったのでごわす。しかも同じように、女子からの書き込みが全くなかったのでごわす。なんかラジコンとかオタク趣味の話とかで盛り上がっていたのでごわす。
「こ、これは…」
「これがオマエの将来の姿だ。オレの努力も無駄に終わったようで残念だよ」
親方は吐き捨てるように言ったのでごわす。それは絶望を味わった男にしかわからない、ただただ悲しい表情だったのでごわす。
「親方! そんなことは言わないでほしいでごわす! ちゃんとモテサイトになるまでご教授いただきたいのでごわす!」
「ムリだ。ムリなんだよ!」
「おやかた〜っ!!!」
おいどんは涙がとまらなかったのでごわす。
「なんで、なんで正月からこんな悲しい思いをしなければならないのでごわすか。おいどんは、おいどんのサイトはどうなってしまうのでごわすか。おいどんはファック出来ずにサイトを閉鎖しなければならないのでごわすか。悲しすぎるでごわす」
親方はハイライトを取り出し、ゆっくりとタバコに火を着けたのでごわす。その姿はまるで、ジャンギャバンがシネマの中でヨレヨレの襟を立てて吸っていたような、そんな哀愁が漂っていたのでごわす。
「いいかいくぼうちちゃん、オメエが今までしてきたことで最大のミスを教えよう。今まで女子のウェブマスタにケンカ売ったとか、そういう覚えはないかい?」
「そ、それは…」
「身に覚えがあるならくぼうちちゃん、それは一番やっちゃいけねえ事だったんだよ。いいか? 女子のアクセスなんてのなだな、女子のサイトから来ることが実に多いんだよ。それを絶ったということはつまり、女子からのアクセスを絶ったということと同義なんだよ」
「だ、だってそれは向こうがケンカを売ってきて…!」
「言い訳は聞きたくない! 事態は深刻なんだ。そのことがなぜわからないんだ! オマエの悪評はICQを通して多くの女子の間に伝わっているっていうんだよ! 一人の女子を敵に回したってことはそういうことなんだよ!」
おいどんは、もう取り返しのことをしてしまったのでごわす。もうダメなのでごわす。おいどんは、おいどんの夢は、今崩れようとしているのでごわす。しばらくの沈黙のあと、親方は口を開いたのでごわす。
「くぼうちちゃんは、テキストのサイトがやりたかったんだよな?」
「そ、そうでごわす! カッコイイテキストのページを作ってモテモテのファックができるウェブマスタになりたいのでごわす!」
「そうか」
親方は続けたのでごわす。
「じゃあ、オメエはテキストの道をゆけ。いいじゃねえかモテと無縁でも。妙に女子受けするサイト狙って作るよりはオメエには合っているかも知れないし、なにより清々しいじゃねえか。そういうのもアリだと思うぜ?」
「親方…」
親方はいつになく吹っ切れたような笑顔を見せたのでごわす。こんな親方を見たのは初めてだったのでごわす。
「ところでくぼうちちゃんは、サイトの寿命ってのがどれくらいだと思う?」
「さ、さあ? 多分3年とか4年くらいじゃないでごわすかね? おいどんはそれくらい続けてみたいのでごわす」
「一年だよ」
「いちねん?! そんなに短いのでごわすか?!」
「ああ、それも熱心に更新を続けているサイトほどその寿命は短く、はかないものなのさ。そして、自分の気持ちを正直に出したサイトほど、突然サイト閉鎖する事が多い」
「で、でも親方のサイトはもう30年も続けているではないでごわすか。そんなに続けられるのはなぜなのでごわすか」
よく訊いてくれた、とでも言いたげに親方は話してくれたのでごわす。
「それは、テクがオレを守ってくれたんだよ。今までオレが教えた諸々は、小手先のテクに過ぎない。つまりオレが教えた事をそのまま続けていれば、何も頭を使わずとも人気サイトになれたはずだったんだよ。しかしオメエは幸か不幸か、それを使いこなすことはできなかった」
「そ、そうでごわす」
「でもくぼうちちゃんよ、オレはアンタが正直言って羨ましいよ。オレは、テクを知っているからネタ切れにも困らず、30年の間サイトを運営する事ができた。しかし、それはオレの頭を使わなかったが、別のものすごい違和感が支配していたんだよ。オレはちょっと、疲れてしまった。もう後先無いかも知れねえなあ、なんて思うときもあるんだ」
「そ、そんな縁起の悪い事を言わないでほしいでごわす!」
親方は苦笑いをしたのでごわす。このときの親方は、ものすごくか弱い、初老の男に見えてしまったのでごわす。小さく見えたのでごわす。
「そうだなくぼうちちゃん。思い過ごしだよなあ」
窓辺に座っていた親方は、ふうと煙を吹いたのでごわす。その煙は、ふわふわと空に消えていったのでごわす。
親方今日の名言『女子のアクセスなんてのなだな、女子のサイトから来ることが実に多いんだよ。それを絶ったということはつまり、女子からのアクセスを絶ったということと同義なんだよ』
幕内